第8章 玉風
本当はこのままいつまでも和奏の事、抱き締めて居たいけど…そろそろ赤葦が怒ってるんだろうなぁ。と練習継続中の体育館を思い出す。
「和奏、明日の夜また会おう?ツッキーが会いに来たら、そっち優先してもいいし。その後でも…俺、何時まででも待ってるから。」
腕の中で和奏が頷いたのを確認して、堪らずおでこにキスを落とす。
段々俺に素直になってきた和奏が本当に可愛い。
「木兎さん…キスはダメって言いましたよね?明日、会いませんよ?」
少し膨れてそう言う様子さえ可愛い。
「許して。可愛すぎる和奏が悪いんだから。」
「本当に…何喋っても軽いですね。」
元からそんなに怒ってなんてないのだろう。
クスクスと笑っている和奏を解放して、少し乱れた髪の毛を撫でる。
「連絡…したいんだけど?」
こんな事までしといて、携帯の番号も知らないとか…。
携帯をヒラヒラ見せると、あっと、驚いた様子で口頭で番号を教えてくれる。
今、言われた番号に発信するが和奏の携帯が鳴る様子がない。
「あっ、携帯…荷物の中です。後で確認しておきます。」
何だか、部活の連絡事項みたいに色気のない会話になったのが残念だけど…。
「はいはい。また明日連絡するよ。」
もう一回抱きしめようかと思ったけど、また離すのが嫌になるから、ぐっと我慢して和奏を見送る。
ふーっとため息を吐きながら座り込む。
昨日の乱れた和奏を知ってるだけに…我慢するのがキツい。
でも、これ以上嫌われたらマジでアウトだろうし…。
頑張れ、俺。
そろそろマジで戻らないとなぁ。
そんなことを考えていた所に、人の気配を感じて頭を持ち上げる。
和奏じゃない…もっと背の高い…。
「ありゃ…。見ちゃった?」