第8章 玉風
これ、和奏に聞かれたら絶対に睨まれるよなぁ。
でも、こういうことを適当に喋れるのは経験のなせる技だ。
「…遊びのつもりなら…皐月には手を出さないで下さい。あいつは…そんは器用なタイプじゃないんです。」
少なくとも、目の前で拳を握りしめて震えている少年よりは俺の方が圧倒的に慣れている。
ってか、影山君がピュア過ぎて笑いそうになる。
和奏も…ツッキーも恋愛に関しては直球勝負なタイプだけど(ツッキーは表現がちょっと…ねじ曲がってるけどね)、そこにこんだけ純度の高いピュアな影山君が絡んで来ると…そりゃかき乱してくれる事だろう。
でも、そのピュアさ…俺には無意味だよ。
「本気だったら、文句ないんだな。まぁ、すぐに和奏もツッキーや影山君なんかじゃ満足出来なくなるよ。精神的にも…身体的にもね。」
言い返せないのか、再び悔しそうに黙り込んでしまった。
ってか、影山君は和奏を抱いた事があるんだろうか?
くそ…羨ましいな。
俺も早く和奏から可愛くおねだりされて、骨抜きにして、もう木兎さんじゃなきゃダメって言わせてぇ。
今、表に出したら絶対にアウトだろう事を心の中だけで地団駄を踏む。
「あの…木兎さん。」
予想外の方向から第三者の声が聞こえて、俺も影山君も相当驚く。
「んだよ!赤葦かよ!驚かせんなよ!!」
赤葦がシレっと立っているけど…いつから居たんだよ。
マジで。
「次、試合の番なので呼びに来ました。」
「え?もう?わかった!行く行く!!じゃあ、影山君もまたね!」
正直…どう切り上げようか迷っていたから、助かった。
赤葦に短くお礼を伝えると、いつも通りシレっと返事が返って来る。
「セッターですから。」
セッターの能力ってマジすげぇな。