第8章 玉風
結局、予定より少し手こずってしまって、ゲームが終わる前にツッキーが体育館に戻って来たのが見える。
しまった…。
でも、その表情は上手くいった顔じゃないな。
ゲームセットの号令を聞くなり、赤葦に少し外すと告げて外に飛び出した。
和奏を探さないと…。
そう思っていたけど、体育館を出ると直ぐに和奏の姿が目に入った。
泣いている姿だ。
やっぱりツッキーと仲直りは出来てないよなぁ。
俺、チャンス!
きっと昨日で悪くなったであろう印象を挽回しなくてはならない。
後ろから近付き、大げさに声を掛ければ、リアクションのお手本のように驚いてこちらを振り返る和奏。
その反応だけで、可愛過ぎて抱きしめたくなる。
「ぼ…くとさん。」
「ごめん、驚いた?こんな所で泣いてる子が居たら、驚かしてでも泣き止ませたくなるだろ?今から時間ちょうだい。」
本当に…俺以外の奴に声掛けられたらどうするつもりだ。
この合宿には飢えた男どもが沢山参加しているというのに。
「すいません。今は…ちょっと。」
自分の身がどれだけ危険に晒されているかもわかってない純粋な和奏。
どうせ警戒されてるなら、少しくらいそれを逆手にとって言うこと聞かせてもいいだろう。
だって、俺が和奏の泣き顔を他の奴に見せたくない。
「和奏に拒否権はないぞ?」
「わかりました。」
少し怯えたような顔で言う和奏が可愛過ぎて…、
本当にこんな所に1人で放置してたら危なかった。
早く他の奴らに見つからない所へ和奏を隠してしまいたい。
そう思って、合宿中に隠れ家代わりにしている人気のないスペースへ和奏を案内した。