第8章 玉風
「ここ穴場なんだ!和奏は他の人に見られると困るだろ?特にツッキーとか…って、それは絶賛喧嘩中だっけ?」
一言も喋り出す気配のない和奏にこちらから声を掛ける。
ツッキーの事をわざわざ話題に出したのは確認の為だ。
仲直り出来ていないとは思うけど…念の為。
「誰のせいだと思ってるんですか…?」
そう言って睨んでくる和奏の様子が…まるで小動物のようで堪らない。
反抗的なのにそんなに可愛いなんて反則でしょ。
「え?俺のせいじゃないでしょ?それとも…ツッキーに言っちゃったの?昨日の事。」
もっと和奏を怒らせてみたくて、わざとトボけながら確信をつく。
ツッキーと喧嘩してしまったのが、俺のせいじゃない事くらい和奏もわかっているだろう。
「言えるわけありません。」
言葉は先程と変わらず強気なのに、先程より悲しそうな表情の和奏に、自分で言い出したくせに怯んでしまう。
「そんなに…敵対心剥き出しにされると流石に凹む。俺、これでも泣いてる和奏を慰めて、悩み相談に乗ってやろうと思って練習抜けてきたんだけど。なぁ、俺に相談しない?俺なら今の和奏の状況を嘘を付かずに相談出来るし。それに俺って経験も豊富だから、きっといいアドバイス出来ると思うけど。」
敵対心なら…別にいい。
怒れるくらい元気なら。
でも、そんな寂しそうな顔はしないでくれよ。
ポツンと1人取り残されたみたいな顔…。
相談に乗るなんて…最初はそんなつもり全く無かったけど、話しているうちに段々といいアイディアのように思えてくる。
「本当に…どの口がそんな事言うんですか…。」
呆れた口調で笑った和奏をみた時に、このアイディアはまちがってない!と確信した。