第8章 玉風
朝からチラチラと和奏とツッキーの様子を伺っている。
でも…昨日までと何の変化もない。
いや、昨日より更に気まずそう。
その原因を作ったのは自分でもあるんだけど…。
どこかで、もしかしたら和奏がツッキーに全て打ち明けてしまうんじゃないかと思っていた。
朝一番でツッキーに会った時は、殴られる覚悟までしてたくらいだ。
でも…やっぱりツッキーには言えないんだな。
それで1人で抱え込んでるんだ。
昨日は少し方法が強引過ぎた事は認めるけど…やった事は間違ってなかった。
落ち込む様子の和奏にその確信が深まる。
「なんか、静かな木兎さんは不気味なんですが…」
練習試合の最中に赤葦が呟く。
「俺だって考え事くらいしてもいいだろ。」
「まぁ、スパイクも決まってますし…考え事してるのに絶好調な木兎さんとか…。」
ったく、先輩相手に失礼な奴だ!
「今の俺は勝利の女神を手に入れる一歩手前だから、絶好調なの!」
そう。もう一歩踏み込めれば…。
「そういうご利益は手に入ってから効果を発揮するのでは…?」
赤葦は本当に頭が固い。
まぁ、頭の固さだけで言うとツッキーも同レベル…って、あれ?
休憩中の烏野の群れの中から、新しく入ったマネちゃんがツッキーの背中をぐいぐいと押して外に出るように促している。
あれは…和奏と話すに違いない。
チラッとゲームスコアを確認するとあと4ポイントでこちらの勝ちだ。
速攻で終わらせて2人の様子をこの目で確認したい。