第7章 青嵐
「ここ穴場なんだ!和奏は他の人に見られると困るだろ?特にツッキーとか…って、それは絶賛喧嘩中だっけ?」
穴場と言い張る通り、人気のない校舎裏へ案内される。
さっきの蛍との言い争いを見ていたんだろうか…?
確かに体育館を出てすぐの場所だったし、見られていても不思議はない。
「誰のせいだと思ってるんですか…?」
そう言って睨んでみる。
「え?俺のせいじゃないでしょ?それとも…ツッキーに言っちゃったの?昨日の事。」
私の睨みなどなんの効き目もないと証明するように、木兎さんがキョトンとしてこっちを見ている。
わかってる。
蛍とすれ違っているのは木兎さんのせいではない。
もちろん私の中ではそれも大きく引っかかっているけど…それが原因ではないのはわかってる。
木兎さんの事が無くても、蛍とはすれ違っていただろう。
「言えるわけありません。」
私の返事に、木兎さんは少し困ったように頭を掻く。
「そんなに…敵対心剥き出しにされると流石に凹む。俺、これでも泣いてる和奏を慰めて、悩み相談に乗ってやろうと思って練習抜けてきたんだけど。」
悩みの一因を作っておきながら、どんな冗談だ…。
そう思って木兎さんを見ると…返す言葉を失う。
この人は、またこんな冗談みたいな事を本気で言っているのか。
「なぁ、俺に相談しない?俺なら今の和奏の状況を嘘を付かずに相談出来るし。それに俺って経験も豊富だから、きっといいアドバイス出来ると思うけど。」
「本当に…どの口がそんな事言うんですか…。」
何だか、1人で怒っている自分がバカらしくなって、笑ってしまう。
これはもう木兎さんのペースに巻き込まれていると、心の冷静な部分で思いながら。