第7章 青嵐
な…んで?
別に他の人にニコニコなんてしていない…言いかけてやめた。
たぶん、蛍が他の女の子に優しくしたと言っても…例えば青城の及川さんみたいなフェミニストぶりを発揮している訳じゃないんだろう。
ある意味普通の対応…それを無愛想な蛍がするから優しく見えたり…するんだろう。
それと比べたら、確かに私は愛想を振りまいていると言われれば…そうなのかもしれない。
だからって、そんな言い方はあんまりだ…。
「本気で言ってるの?私が他の人に愛想振りまいてる?そんな気ないのは蛍だってわかってるでしょ?それに、私がヤキモチ妬いてるの知ってて他の子に優しくするなんて…悪趣味。」
「僕が妬いてるのを知ってるのに、王様と2人でいる方が何倍も悪趣味だと思うけど?それとも楽しんでるの?木兎さんにまで言い寄られて…僕にヤキモチ妬かせて楽しい?」
あっ…木兎さん…。
いや…蛍は昨日の事は知らないはず…。
絶対にバレちゃいけない。
「そんな…わけない。木兎さんだっていつもの冗談だって蛍だってわかってるくせに。」
ジロっとこちらを見る蛍の視線に、私の後ろめたい事全てが見透かされてるようで身構える。
「和奏だって、木兎さんが冗談じゃないことくらい気付いてると思ってたけど…。ねぇ、この話し合い…きっと平行線のままだよ…。僕達、少し時間が必要なんじゃないかな?少し頭冷やそう…お互いに。」
確かに…いつまで経っても答えになんて辿り着ける気がしない。
だって、蛍は私の事を全然信頼してくれていないから。
「そう…だね。お互い少し冷静になった方がいいね。」
涙を堪えてそう答えると、練習に戻るから…と言い残して蛍が去って行く。
なんで…私達は分かり合えないんだろう。