第7章 青嵐
「そうだね。ちゃんと話さないと。でも…合宿中じゃそんな時間取れないかも…。」
「なっ…何言ってるんですか!?月島君だって合宿どころじゃない状態なのに!!すぐにでも話さないと!ちょっと待ってて下さい!」
仁花ちゃんがバタバタと体育館の中に姿を消すと、3分程で蛍の背中を押しながら戻ってきた。
「ちょ…谷地さん!?説明が全く足りてないんだけど、緊急って何?」
蛍は背後の仁花ちゃんを振り返り困った様子だったが、進行方向に私が居るのを確認すると、はぁと短く息を吐いた。
「キャプテンや監督には私から説明します!だから、今すぐに…話し合って下さい!では、私は失礼します!」
いつもの控えめな仁花ちゃんはどこに行ったんだ?
そんな疑問が浮かぶほどの勢いで言い残した仁花ちゃんが、止める時間もない程の勢いで去って行った。
「あ…の、練習大丈夫…かな?」
同じく仁花ちゃんの勢いに押されていた蛍を覗き込む。
「あぁ…うん。少しなら大丈夫だと思うけど。」
「じゃあ、少し…話したいの。昨日の事…。」
何だか…蛍を相手に話してると思えないくらい…気まずい。
蛍が何を考えているのか、全くわからないから。
いつもなら、蛍の考えなんて手に取るようにわかるのに。
それだけ心が離れているという事だろうか。