第6章 寒風
気を失っている和奏の衣服を整える。
静かな部屋には重苦しいくらいに後悔が充満している。
僕も…少し頭を冷やさないと。
ふと以前、頭が空っぽになるまで跳べばいいと黒尾さんと木兎さんにアドバイスされた事を思い出す。
「ヘイヘイ!ツッキー!自主練付き合ってくれよー!」
木兎さんはまだ自主練をしているだろうか。
時計を確認するとまだ夕食時刻まで少しある。
きっと木兎さんはもちろん、誰かしら残っているだろう。
眠り続ける和奏を抱き上げ、女子部屋に運ぶ。
和奏が王様が好きだと言って来たら…僕はどうなるんだろう。
和奏にこれ以上酷い事をしてしまうんじゃないかと思うと…冗談でも笑えない。
すやすやと安らかな寝息を立てる和奏。
僕の腕の中で、ずっとこんな顔をしてたらいいのに。
先程までの泣き顔が嫌でもチラつく。
「ごめんね、和奏。」
綺麗な寝顔に向かって、今日何度目かの謝罪を呟いた。
女子部屋までの距離はあっという間で、部屋にいた梟谷のマネージャー達に出迎えられた。
相変わらずキャーキャー騒いではいたけど、和奏は移動の疲れで眠ってしまったと伝えると、すぐに布団を準備してくれた。
疲れているので、なるべく寝かせてあげて欲しいと伝えると、頼りになる笑顔で任せておくように言われる。
本当に…話の通じる人達でよかった。