第5章 黒風
「木兎…さん、お願い…します。イ…かせて下さい。」
木兎さんにそうお願いする事も、自分から唇を重ねる事にさえ抵抗が無かった。
「ん…んぅ…」
キスをしたまま達した。
最後のキスは、私の方から必死に求めていた。
蛍の事なんて考えるのはやめていた。
「なんで…こんな事したんですか?」
自分でやっておきながら、大丈夫?と気遣わしげにこちらを見てくる木兎さんを見る。
私…最後は蛍なんてどうでもいいと思っていた。。。
本当なら最低だ。
自己嫌悪に涙が止まらない。
「なんで…って…やりたかったから。和奏の事、何も考えられないくらい感じさせてやりたかった。ツッキーより、俺の方が気持ちよくしてやれるって知って欲しかった。」
「こんな…冗談でも酷いです…。」
こんな方法で知らせてくれなくても…。
私と蛍はもうダメなんだって目の前に突きつけないでも…。
「それだよ…。いつも冗談扱いしてさ…俺の事は安全パイだとでも思ってた?さっきも言っちゃったけどさ、俺は本気だよ。本気で和奏が欲しい。俺だけの物にしたいし、ここまで来たら手段は選ばない。」
そんな事…言われても、今は木兎さんの事なんて考えられない。
蛍とどうするのか…それだけで私の処理能力は軽くオーバーワークだ。
黙り込んでいる私に木兎さんが意地悪そうに笑いながら言った。
「最初の質問って覚えてる?ツッキーに隠し事せず、なんでも打ち明けられるのか?って。この事…ツッキーに話せんの?」
「な…言える訳ないじゃないですか。」
影山くんとの仲を疑ってるだけで…あんな目に合うのだ。
木兎さんとの事など言ったら…。
「一層、壊れてしまえば、いいのに。」そう呟いた蛍の悲しげな顔が浮かんでくる。