第5章 黒風
「だよね。自分から俺にイかせてくれってお願いして、キスまでして…何度もイかせてもらいました…って、流石のツッキーも彼女からそんな事聞かされたら可哀想だな。」
「お願いは…木兎さんが…無理矢理…。」
「別に拒否しても良かったんだよ?俺、強制はしてないよね?まぁ、和奏は言えなくても、俺はツッキーに言えるよ?何度も可愛く喘がせてやったって。お願いも最高に可愛かったって。」
そうだ。
蛍に言えないような事をしたのは私だ。
蛍が言う通り、他の人とこんな事を…。
取り返しのつかない事をした…。
誰かに縋り付きたい気持ちなのに、縋り付いていい相手なんて一人もいない。
「やめて…下さい。それだけは、言わないで…。」
「いいよー。別に俺、和奏とツッキーの仲を自らの手で引き裂く気は無いんだよね。まぁ、2人はいづれ上手く行かなくなるだろうし。和奏がたまに俺の言うこと聞いてくれれば、今はそれだけで十分。」
先程の行為中もそうだったが、木兎さんはあまりにも真っ直ぐな言葉で、私に現実を突き付けてくる。
私と蛍はもうダメなのだと。
「大丈夫だから。泣かないで。」
木兎さんがそう呟きながら、私を抱きしめる。
この人はどんな立場でそんな事を言ってくるのだろうか。
木兎さんの下半身が熱く硬くなっている部分が当たっている。
木兎さん…我慢してるんだ。
私はあんなにイったのに…確かに木兎さんは何1つ自分が気持ちいい事はしていない。
本気…なのかな?
先程の告白が蘇る。
張り倒してやりたいような…
この温かさに縋り付きたいような…
そんな矛盾が戦って、私は抵抗する事をやめた。
もう…どうでもいい。