第5章 黒風
目が覚めると、マネージャー達のいる女子部屋だった。
「あ…れ?私…」
慌てて自分の格好を確認するが、先程までと同じジャージで着崩れた様子もない。
まさか…夢?
「あっ、和奏ちゃん!目が覚めたんですね?」
仁花ちゃんが寄ってくる。
「和奏ちゃん、移動のバスで寝れなかったみたいで、話してる最中に寝ちゃったからって、彼氏君がここまで連れて来てくれたんだよ。」
「しかも、お姫様抱っこ!!」
梟谷のマネージャー達が、その時の様子を演じながら説明してくれる。
そ…か。
蛍がここに運んでくれたのか…。
じゃあ…さっきのは…。
残念ながら夢じゃないことは、身体の異様なダルさが教えてくれる。
なんだか…泣きそうだ。
「和奏ちゃん、大丈夫?動けそうなら、食堂に夕食残してあるから…。」
潔子先輩が心配そうに覗き込んでくれる。
食欲など全くないが、ここに居たら皆に心配を掛けてしまう。
「本当ですか?実は腹ペコで…ちょっと行って来ます!」
布団から勢いよく起き上がる。
「あっ、和奏ちゃん!私も一緒に行きましょうか?もう暗いですし…。」
仁花ちゃんが、青くなりながら言っている。
お化けの心配でもしてるのだろうか。
「ありがとう。でも、私は大丈夫だから、潔子先輩についててあげてね!」
そう言うと、わかりました!と勢いよく敬礼をしていた。
あははっと笑いながら、賑やかな部屋を出る。
外の廊下は真っ暗で…今の私の気持ちみたいだ。