第1章 小風
「何だっけ?僕なんて無視していい…だっけ?」
帰宅後、有無を言わせず私をベッドに組み敷いた蛍が言った。
「だって…それは仁花ちゃんが怖がってたし…。」
「ふーん。言い訳ね。まぁ、いいよ。無視出来るものなら、無視して見せてよ。」
蛍が首筋に首を埋めると、チュッチュッと部屋中に音が響く。
くすぐったさに身をよじっていると、あっという間に晒された胸を蛍が遠慮もなく口に含む。
「や…だめぇ…。」
「あれ?僕なんて無視するんじゃなかったの?」
完全に私の様子を楽しんでいる蛍。
顔は見えないが、絶対に笑っている。
「あ…け…い。あぁ…。」
敏感な先端を舌先で転がされたら、こちらはあっと言う間に余裕がなくなってしまう。
「腰、動いてない?気のせいか。僕の事なんて無視してるんだもんね。」
蛍がやけにゆっくりと下着を取り去った。
こうなるといつだって蛍の思い通りだ。
私は手のひらで転がされるしかない。
「ふーん。無視してても和奏はちゃんと濡れるんだ。」
「無視なんて…してな…あぁ…。」
蛍の長い指が中に入って来るのに耐えきれず、身体がビクッと反応する。
「和奏、ダメだよ。そんなに感じちゃ。もっとちゃんと無視しないと。」
「ちが…の。無視してな…い。や…あ…。けい…。」
私のいい所を既に知り尽くした蛍が容赦無く攻め立てる。
「何?聞こえなよ。」
「ひゃ…だぁ。ごめ…さい。けい。ごめん…さい。」
「何謝ってんの?」
全て分かりきった蛍の笑顔。
ほら、私は蛍の思い通りになるしかない。
「無視…とか言って、ごめんな…さい。もぉ…イかせて…欲しいの…。お…ねがい。」
満足そうな蛍。
私は蛍の思い通りだけど…
そういう意味では蛍だって私の思い通りの反応を返してくれる。
「どうやってイきたいの?」
「けいの…。蛍のでイカせてぇ。」
「和奏、可愛い。」
ほら。蛍は思い通りの快楽を与えてくれる。
快楽の底に落ちながら、そんな事を考えていた。