第1章 小風
「もう…蛍のバカ。今日は合宿前に宿題全部終わらせる為に来たんでしょ?」
全部外された制服のボタンを1つずつ止め直して蛍を見ると、
何事もなかったかのように鞄から教科書などを取り出している。
「そうだよ。おバカな和奏の宿題を終わらせる為に来たんだから。さっさと終わらせよう。その後、お礼もしてもらう予定だし。」
な…お礼って…。
蛍の言うお礼なんて想像がつく。
…日向くんや影山くんの事をスタミナ馬鹿呼ばわりしてたが、私からすると蛍だって十分にスタミナ馬鹿だと思う。
「お礼に美味しい夕食作るね!」
私の返答に蛍ははーっとわざとらしい溜息で返したけど、スルーを決め込んで、蛍の向かいに座る。
「ところで、蛍の宿題は??」
「とっくに終わらせてるよ。合宿の準備も。ってか、こんなに直前まで手付かずで残してる方が凄いよね。」
付き合っても、一言多いのは相変わらずだ。
明日からバレー部の1週間の東京遠征がある。
いつもの梟谷グループの合宿に参加させてもらうのだ。
合宿が終わると同時に、学校の休暇も終わってしまうので、今日中に宿題を全て終わらさなくてはならない。
「日向くんとか絶対に宿題やってないよ。」
影山くんもやってないだろうが、
わざわざ影山くんの名前を出して蛍を怒らせる必要もない。
「いや、日向を比較対象に出して来る時点で…。」
ブツブツと文句は言いつつも、わからない所はしっかり教えてくれるので、宿題はあっと言う間に片付いた。
これは…美味しいご飯を作ってあげないと。
頭痛の種だった宿題が片付き、
明日からの合宿が俄然楽しみになってきた。