第4章 順風
ツッキーや他の誰かの為じゃなくて、
皐月ちゃんの優しさも、心配も、ヤキモチだって全部俺に向けられればいいのに。
皐月ちゃんの事、呆れるくらい楽しませて、笑わせてやりたい。
こんな気持ちになったのって…初めてかも。
だから…強引には攻めたくなかった。
方法も、タイミングも、いくらでもあったけど…
皐月ちゃんが幸せそうに笑えるなら…
ツッキーと付き合う事が皐月ちゃんの幸せなら…
見守ってやってもいい。
むしろ、それも愛の形かもなぁ…なんて、考えたりもしてたんだけど…
さっきの皐月ちゃんとツッキーの様子を見て気が変わった。
ツッキーの横で笑えないなら、辛い思いして一緒にいる必要ないでしょ?
俺ならとびっきり笑わせてあげられる。
だから、今回は少し強引でも、こっちに振り向いてもらうつもり。
「黒尾くーん!自主練付き合ってくれるって約束だぞー!」
今日も絶好調で練習を終えて、まだ打ち足りないスパイクの為に黒尾君に声を掛ける。
「えー。」
心底めんどくさそうな顔してるけど、結局付き合ってくれるだろう。
どうせなら、ブロックをもう1枚…。
「ヘイヘイ!ツッキー!自主練付き合ってくれよー!」
朝からずっと不機嫌なツッキーに声をかける。
「僕は今日は遠慮しておきます。」
引き止める時間もくれないなんて…。
まぁ、皐月ちゃんの所に行くんだろうな。
今日一日ずっとギクシャクしてたからな。
まぁ、精々頑張って仲直りしてくれ。
「俺も気合い入れていくかー!」
「木兎さんは自主練で気合い入れまくるのやめて下さい。」
ツッキーの後ろ姿を見送りながら皐月ちゃんにぶつけるための気合いを吐いたのに、赤葦に拾われてしまう。
とりあえず、今はバレーに気合いぶつけるとしますか!