第3章 恒風
「月島は?あいつと何かあったのか?」
何も言えないでいると、
影山くんがぐっと私の肩を掴んだ。
「ううん。大丈夫だよ。」
何とか絞り出すと、眉間に深く皺の入った影山くんがこちらを睨んでいる。
「俺に強がり言うなって言ってるだろぉが!ボゲェ。」
本当…影山くんはいつだって私に甘い。
ポロポロと涙が止まらなくなる。
頭にぽんぽんと影山くんの手が触れているのがわかる。
「本当は…今すぐにでも抱きしめてぇ。けど、そんな事したらお前困るだろ?月島が原因なら容赦しないけど。」
なんだか、一瞬影山くんに抱きしめて欲しいような気持ちになる。
心が弱ってると、とんでもない事を考えるなぁ。
心の中で、蛍に謝罪しながら、
ポツポツと先ほどの事を影山くんに打ち明けた。
「だから、蛍は悪くないの。私が勝手に不安になってるだけって言うか…。」
人に話すと、少しだけスッキリして涙は止まった。
「いや、それ、月島が悪いだろ。皐月の事、不安にさせてる時点で月島が悪い。」
「えっ…それじゃあ、蛍が可哀想だよ。」
あまりにもハッキリと断言する影山くん。
誰かが代わりに蛍を責めてくれる事で、
私は蛍を弁護する事が出来る。
きっと影山くんはわかってやってくれている。
「俺なら…お前を泣かせたりしないのに。」
「あ…の…。」
「嘘だ。いや、本気だけど…でも、お前を困らす事はしたくないから、嘘って事にしとけ。」
私は…何で影山くんの気持ちに向き合ってあげられないんだろう。
こんなに真剣に思ってくれているのに…。
それでも蛍じゃないとダメなんだ。