第3章 恒風
色々嫌な想像をしてしまっているうちに、
合宿の集合時間が近付いている。
今なら…。
今連絡したら、蛍が迎えに来てくれるのにも間に合うだろう。
でも…今、蛍と会って普通に出来る?
合宿前に喧嘩なんかして気まずくなるのは避けたい。
それに、告白なんて蛍のせいじゃないのに、
勝手にヤキモチを妬いて、重たい奴だと思われたくない。
蛍は私を好きだと言ってくれたけど、
こんな心の狭い私に、今頃後悔しているかもしれない。
結局、蛍には連絡出来なかった。
学校まではすぐだし、1人で向かっても特に困る事はないだろう。
大丈夫。
知らなかった事にしよう。
私との時間を切り上げて向かった先が、女の子からの告白だった事。
氷点下どころか、物腰柔らかそうな雰囲気で対応してた事。
私は何も知らない。
家を出て、1人暗い道を歩いていると何故だか涙が込み上げてくる。
蛍に嫌われる事を恐れて、何にも言えない自分になっている。
これじゃ…付き合う前と一緒だ。
蛍に身体を求められて、
嫌われるのが怖くて、
ずるずると関係が続いていたあの頃と。
「おい。皐月、お前…1人なのか?って…泣いてんのか?」
後ろから声を掛けられビクっとなる。
よく聞き覚えのある声だった。
私が弱っている時に側にいるのは、
なんで、いつも影山くんなんだろう。