第15章 花風
掴まれた腕を振りほどいて、逆に和奏の腕を掴む。
正直…もう待てない。
僕はここで和奏を押し倒したいって言うのに。
「あの…蛍?」
「家に行くんでしょ?黙って着いて来なよ。」
自分で言ったくせにキョトンとしている和奏の腕をぐいぐいと引っ張って和奏の家へ向かう。
ポケットから鍵を取り出し、鍵穴に突き刺す。
この鍵も…返さないとな。
そう思って和奏の部屋の合鍵を見つめて、少し冷静になる。
和奏を大切に出来るのは僕だ。
和奏を傷付けるような事は…昔のような過ちはおかさない。
「蛍?」
手元の鍵を見つめたままの僕を、和奏が不思議そうに覗き込んだ。
「話、ここで聞く。あとコレ…鍵、返しておくよ。」
部屋に入ってしまうと、僕の理性が効かなくなるかもしれない。
今度は和奏が渡された鍵をじっと見つめる番だ。
ぐっとこちらを見上げる和奏と目が合う。
なんで…また泣きそうな顔してるんだよ。
ここ数日、和奏が僕に向けて来た顔。
その今にも泣き出しそうな寂しげな顔を見る度に心が乱されて来た。
「一人で帰るって言ったら、きっと蛍なら家まで送ってくれると思ったの。」
和奏が寂しげな表情のままこちらを見上げた。
目の前の和奏が何を考えているのか、僕はわからずに、ただ立ちすくんでいた。