第15章 花風
バスから降りると深夜の風が冷たく顔に当たり、目を覚まさせる。
んっと伸びをするが、バスで凝り固まった身体はそう簡単にほぐれそうもない。
今日はこの時間だから、このまま解散だと出発前に聞いている。
寝惚け顔のバレー部の皆もぞろぞろと校門に向かって歩いているので、それに従うことにした。
にしても…と、軽く後ろを振り返ると、俯き加減で和奏が後ろを歩いている。
…てっきり清水先輩や谷地さんと帰るものだと思ってきたのに。
危機管理意識が足りない。
寝惚けてて深夜だと気付いてないんじゃないだろうか。
「ねぇ…一人で帰るつもりじゃないよね?」
足を止めて、振り返らずに聞く。
足音で和奏が真後ろまで近付いて来たのがわかる。
きっと…振り向けばすぐに抱きしめられる位置だ。
和奏の足りない危機管理意識に、心の中で深いため息をつきながら返事を待つ。
「一人で…帰るつもり。」
本当に…バカなの?
ため息しか出ない。
「あっそ。僕は君の家の前を通って帰るから、勝手に後ろ歩いてたらいいよ。」
正直、和奏と帰るなんて地獄だ。
目の前に餌があるのに、延々と待てをされてる犬のような…って、僕は何を考えてるんだろう。
とにかく、こんな夜道を一人で帰らせるわけにはいかない。
「うん。ありがとう…。」