第15章 花風
「はー。それって王様に関係あるの?ってか、バスに乗る前にみんな騒いでたから、僕と和奏が別れたのも聞いてると思うけど?」
僕も王様の顔なんて見たくもないから、窓の外に視線を向ける。
まぁ、暗くて自分の顔と王様の横顔が反射して見えているんだけどさ。
「別れた事は皐月から聞いた。」
…そう。
いや、僕には関係ないけどさ…。
でも…面白くない。
「あっそ。なら、なおさら僕に何の話があるのさ。」
「木兎さんの事で皐月に対して怒ってるのかもしれないけど…あいつの話を聞いてやる気はないのか?」
は?
木兎さんの事まで和奏から聞いてるの?
思わず視線を窓から王様にうつすと、向こうもこっちを見ていた。
近距離で目が合うとか…気まずい。
「話し合う意味も、必要性もわからないんだけど。」
和奏が王様に全部話してる意味もわからない。
「俺は…こんな事の為に和奏と別れたわけじゃない。」
「は?何が言いたいの?」
しかも、ちゃっかり和奏の事名前で呼んでるし。
「俺はお前のこと…性格が最悪だと思ってる。でも、和奏が月島と向き合いたいって言い出した時は止めなかった。悔しいけど、俺といるよりお前といた方が、和奏が幸せな気持ちになれると思ったからだ。」
「今更、何の話してるのさ?」
今更、そんな過去の話を蒸し返しても仕方がないのに。
「だから、俺は和奏は木兎さんなんかより、お前といた方がいいって信じてる。その方が和奏は幸せだって…。でもお前がそんな感じなら…俺も譲る気ないから。木兎さんより、俺の方が和奏の事大切に出来る。」
王様がこっちを真っ直ぐ見据えて言ってくる。
その意思の強い視線に、思わず何も言えずにいると、王様が視線を前に戻して言葉を続けた。
「だから、和奏がまだお前に話があるって言うなら、聞いてやれよ。それでお前がどんな気持ちになるかなんて、俺は知らねぇ。でも、和奏に心残りがあるのは俺は嫌なんだよ。…もう、話し終わったから寝る。」
言い終わると目を瞑って、3秒でイビキを立て出す王様に深いため息が出る。