第15章 花風
荷物を席の上の棚に押し込んで、窓際の席に座る。
早く帰りたいのに…まだ外で騒いでいるのだろうか。
和奏はあの後、パタパタとバスから降りて行ってしまった。
きっと清水先輩や谷地さんと一緒に戻って来るだろう。
少し目を瞑ると、この数日の寝不足からか、すっと意識が遠のくのを感じる。
バスが動けば、どうせ寝るつもりだったんだから、別に今頑張って起きている必要もないだろう。
眠気の波に意識をさらわれた。
どれくらい眠っていただろうか。
バスの振動で目を覚ませば、照明は落とされ、車内はシーンと静まり返っている。
ふと横の席に目を向ける。
は…?
当然、山口が座ってると思っていたから、思わず声を上げそうになった。
「なんで…王様が隣に座ってるのさ。」
しかも…何で起きてるんだよ…。
「お前に話があったからだろ。」
隣に座った王様が、前を見たまま答えた。
「いつも言ってるけど、僕は話す事なんて無いんだけど…。」
話があったからって、寝てる間に横に座るなんて…やっぱり変人の考えは理解出来ない。
山口もなに譲ってるんだよ。
学校に着いたら、文句言ってやらないと…。
「お前…何でここ数日、皐月の事を避けてるんだよ?」
視線だけは前をじっと見つめたまま、こちらに話し掛けてくる王様。
本当に…なに?
このシチュエーション。
夢のつづきなら、どれだけ良かったか。
答えずにいるとずっと続く無言に、残念ながら夢じゃない事がわかってしまう。
隣に座られていると、学校に着くまでずっと無視してる訳にもいかないだろう。