第15章 花風
山口には…ってか、誰にも和奏との事は話していない。
自分が不甲斐ないせいで、他の男に取られたなんて….わざわざ言うわけがない。
ただ、僕の不機嫌さから、まだ喧嘩中だとでも思っているんだろう。
こんな風に勘違いして、気を使われるのも面倒だな。
いずれ…わかる事だし。
「和奏とは別れたから。」
「え…?だって…そんな…。」
顔を青くして狼狽する山口。
だって….も、そんな…もない。
ただ、別れたって事実があるだけだ。
なんで?って質問が来る前に理由を教えてあげる。
「和奏は木兎さんと付き合う事にしたらしいから。」
イラっとし過ぎて、声の大きさを間違えた事には後になって気付いた。
バスに乗り込もうとしてる烏野の皆が信じられないような顔でこっちを見ていたから。
「えー!?月島と皐月さん別れたの!?なんで??しかも、木兎さん??えー、なんでー?」
「こら、日向!思った事が全部口から出てるぞ。」
「皐月が他校生に持ってかれるとは何事だー!」
「落ち着け。龍!これはチャンスだ!ピンチはチャンスって言うだろ!」
「西谷はなんでそんなポジティブなんだろう。」
「相手は梟谷のエースだって言うのに、旭は同じエースとして少しは対抗してみたら?」
いつも通り、好き勝手盛り上がってる。
まさか話し合いに参加する気にもならないから、一人で荷物を持ってバスに乗り込む。