第14章 涼風
「ダメです。今日は木兎さんに話があって来てもらいました。」
…そう。
ツッキーと別れたから付き合って下さいって話じゃない事だけはわかった。
「もう、それ以上は聞きたくないんだけど。無理矢理でも抱きしめようか?」
傷付いてるくせに、1人で寂しいくせに強がるなよ。
本当に無理矢理抱きしめようかと思う。
嫌われても、和奏が少しでも笑ってくれるなら、その方がいい気がする。
「わがまま言って…振り回してすいません。蛍にはフラれてしまったけど、私は蛍を諦められません。だから、木兎さんとは、もう個人的には会いません。連絡も取りません。」
うーん。
思ったより頑なに決意しちゃってる感じ。
でも、これくらいで引き下がるなら、元々ちょっかいかけたりしてない。
押してダメなら、引けって言うだろ?
まぁ、引くのは得意じゃないけど…背に腹は変えられないってやつ。
「昨日、和奏が…和奏ちゃんがツッキーを追い掛けて行った時から、こうなるだろうと思ってたよ。心ゆくまでツッキーを追い掛けたらいいよ。でもさ、疲れたら俺に戻ってくるのは?ありじゃない?」
んっと両手を広げる。
飛び込んで来て欲しいと祈るような気持ちなのは、和奏には知られたくない。
「すいません。それだけは絶対にないです。」
真っ直ぐこちらを見ながら言い放つ和奏。
昨日の夜、ツッキーを追い掛けると言った時と同じ目。
…これは、結構凹んだ。
押しても、引いても、絶対にないと言われたんだ。
しょんぼりと丸くなりそうな背中を強がりだけでピンと張って、笑ってやる。
「あーぁ。素直な和奏ちゃんも可愛かったのに。でも、つれない和奏ちゃんも元から好きだけどね。じゃあ、これ以上話すこともないし、お腹も減ったから、俺、朝食行くな。」
最後の方は早口で…強がってるって和奏にバレてる気がする。
ってか、何お辞儀で見送ってんだよ!
完璧にバレてるじゃん…。
あぁ…俺、今ダセぇ。