第14章 涼風
校舎の壁にもたれて深呼吸をする。
試合の前くらい集中出来ているのがわかる。
大丈夫。まだ何とかなる。
ここで手放すなんて無理。
絶対に手に入れる。
待ち合わせ時間通りに現れた和奏の様子に、大丈夫と言い聞かせた自信が初っ端から揺らぐ。
そんな…殴り合いの喧嘩しに来たような顔しないでよ。
「昨日はツッキーと話せた?酷いことされなかったか?」
少しでも和奏の強張った顔を緩めたくて、わざと軽い感じで切り出すことにした。
当然、昨日の別れた後の様子に探りを入れたいのもあるけど。
状況によって、どう攻めるか変わってくるだろ。
「蛍には…別れて欲しいと言われました。」
……。
思っていたより、悪くない状況じゃん!
これ、逆転ホームランありえるやつでしょ!
でも、和奏にそんな寂しい顔させるなんて、やっぱりツッキーはダメだな。
お子様だからなぁ…。
「和奏、抱きしめていいか?なんか、和奏がここから居なくなりそうで怖いんだけど。」
早く俺の腕の中においで。
ぎゅーって抱きしめて、超癒してやる!
俺の言葉に難しい顔を崩さない和奏に徐々に心配が積もっていく。