第14章 涼風
「んで、木兎の奴はなんでそんなに荒れてるわけ?」
夜、第三体育館での自主練中に黒尾くんが面白そうに聞いて来た。
「うるさいなぁ。黒尾君には関係ないでしょ。」
「失恋が原因のようです。」
って、おい!
赤葦、何を勝手に答えてんだよ!!
「あー、何?木兎、フラれたの?って事はツッキーと皐月さんは丸く収まった感じ?」
黒尾君の嬉しそうな感じがムカつくから、無視を決め込む。
「どうやら、そっちも上手く行ってないのにフラれたみたいです。」
「ちょっと!赤葦!さっきから何勝手に答えてんの!?」
思わず振り返れば、ニヤッと悪人ヅラの黒尾君が笑っている。
「木兎、フラれ損じゃん。ダセー。」
「黒尾君の馬鹿!何で俺がフラれるんだよー。」
「…がっつき過ぎじゃねぇの?」
「….ですね。」
黒尾君!赤葦!
何で満場一致してんの?
もうイジケモード通り越して、本当に悲しくなって来た。
「まぁ…相手が悪かっただろ。あの2人は結局、お互いしか見えてねぇよ。たまに謎のすれ違いが起こるけどな。」
「あんなに付け入る隙満載だったのに…。」
「付け入る隙とか言ってるからダメなのでは…?あっ、すいません。木兎さん。」
俺の睨みにようやく赤葦が謝ってきた。
まぁ、和奏とツッキーがお互いしか見えてないのは知ってた。
お互いしか見えてないから、すれ違ってたんだ。
そして、ツッキーを一途に見つめる和奏の事を好きになったんだ。
「まぁ、そんなに気を落とすなよ。合宿終わったら可愛い子集めて合コンしてやるから。」
ん?
合コン??
「黒尾さん、何だかすいません。」
「いや、俺も木兎紹介しろって煩いメス猫達がさばけて助かる。」
俺を紹介して欲しい…可愛い女の子。
「それって…俺が主役って事!?」
「…そうだっつってんだろ!」
俄然やる気が出てきた!!
「赤葦!スパイクすんぞー!トス上げろ!!」
「はい、木兎さん。」
単純かよ。なんて呆れてる黒尾君に早くコートに入るように催促する。
しばらくは大好きなバレーと、適当に遊べる女の子。
そのうち、心にポッカリ空いた何かを埋めてくれる物にまた出会えるだろう。