第14章 涼風
[朝食前にお時間頂けますか?]
携帯に届いたメッセージをもう一度眺める。
弱いところを見られたくなくて、速攻で返信したけど…。
「あー、嫌だー。行きたくねぇー。赤葦ー。」
畳む前の布団にゴロゴロと転がる。
「じゃあ、断ればいいのでは…?」
「そんな男らしくない真似出来るかよ!」
昨日の和奏の様子から…何の話か想像がつく。
俺がせっかく少しづつ絡め取ったのに…一気に引き戻されちまうなんて…油断したー!!
「彼氏持ちの女の人にアプローチして…しかも、弱みに付け込んでる時点で十分男らしくないのでは…?」
赤葦が真顔で言い放った事が、俺のガラスのハートを粉々に砕いていく。
「うっせーぞ!とにかく、俺は朝食前に和奏と会って来るから!朝飯の席取っといてくれ。」
「…はい。木兎さん。」
何か言いたげな赤葦を無視して、部屋から飛び出す。
あー、あと一歩だったのに…。
でも、本当にもう手は残されていないのだろうか。
途中で諦めるのは性に合わない。
少しでもチャンスが残されているなら、それだけで十分だ。
そもそも、昨日のあの状況から、和奏とツッキーがやり直せるとは思えない。
それならば、もう一度引き寄せる事も出来るだろう。