第13章 雄風

「なぁ、もう一度聞くぞ。皐月は月島と木兎さん…どっちが好きなんだ？別に何で答えても文句言う気は無いけど…嘘だけはつかないでくれ。」

影山君の質問を、自分の中でじっくり噛みしめる。

蛍と…木兎さん…？

そこでふと、私はこの2人を比較するのが初めてな事に気付く。

蛍と上手くいっていない事を、木兎さんとなら…って考えた事はあったけど、純粋に蛍と木兎さんという人物像を比べる事は初めてなんだ。

そして、考えるまでもなく、私の中に明確な答えがあるのがわかる。

蛍だ…。

どう考えたって、蛍が一番大切だ…。

そんな当然の事を、ここまで追い込まれないと見つけ出せない自分が情けなくて仕方ない。

自然と涙が溢れてくる。

そんな私の様子を影山君はただじっと見ている。

「蛍だよ。私、蛍が好き。」

既に答えがわかっていた様子で頷く影山君。

私は自分がしてしまった事が、どれだけ取り返しのつかない事なのか…その事実の重大さを改めて認識して、足元から地面に埋まりそうな…そんな感覚に襲われる。

「俺は…正直、月島はあんまり好きじゃない。偉そうだし、性格も最悪だと思う。だから…皐月が月島と別れたら…正直嬉しい。」