第12章 夕風
「何してるのか、聞いてるんだけど?」
答えなよ。
自分の口で。
何してたのか。
「覗き見とか…」
「僕は和奏に聞いてるんです!」
部外者は黙れ。
これは僕と和奏の問題だ。
「あの…け…い…。これは…。」
これは…なに?
何なんだよ!
いつまでも木兎さんの腕の中から動こうとしない和奏にイライラして、無理やり引っ張れば、間髪入れずに木兎さんが止めに入る。
「やめろよ。和奏が怯えてんの、わかるだろ?」
和奏が怯えてるのはわかる。
でも、何で僕に怯えているのかは、わからない。
何で木兎さんが彼氏ヅラしているのかも、わからない。
何で…和奏が木兎さんに助けを求めるような視線を送っているのかも…わかりたくない。
「もう…いい。」
もういい。
何も知りたくないし、何も聞きたくない。
和奏からゆっくり手を離す。
引き止めもしないんだね。
結局、そういう事なのだろう。
僕が負けたんだ。
男として…木兎さんに。
和奏は僕など必要無くなったのだろう。
もう、少しだってこの場に居たくはない。
ゆっくりと2人に背を向けて歩き出した。