第11章 猛風
「泣きそうな顔してるぞ。おいで。」
夜、待ち合わせ場所に現れた和奏にそう言えば、本当に昨日までと同一人物かと疑うくらい素直に俺の胸に収まった。
練習中の青ざめた様子からも、何があったのかずっと気になっていた。
「木兎さん…私…、私…。」
「大丈夫だから、落ち着いて。俺が和奏の望みなら何でも叶えてやるから。たとえ、ツッキーと仲直りしたいって望みだって、それを和奏が本気で望んでいるなら叶えてやるから。」
いや、本当はそんな願いなら叶えてやる気はないけど、でも和奏の本当の望みを知ら為なら、これくらいの嘘は許される。
「私、聞いたんです。蛍が…何で他の女の子達からの告白を丁寧に対応してたのかって…」
それから和奏が途切れ途切れに語ってくれた内容は、俺の希望してた話とは正反対。
朝のメッセージで持ち上げられた気持ちが、徐々に落ちていくのがわかる。
そもそも、ツッキーが和奏の事を思って…とか、そんな余計な事を和奏に話したの誰だよ。
和奏の話に相槌を送りつつ、頭の中はどう立て直すかでフル回転だ。
マジで…どうしよう。
ダメだ。冷静に考えるのとか、苦手すぎる。
あー、俺、今だけ赤葦になりてぇ。