第2章 軽風
「そう…だよね。ごめんなさい。聞いてくれてありがとう。」
聞き逃してしまったので、名前すらわからない女の子が泣きながら去っていった。
はーっと長い溜息が漏れる。
まぁ、こんなもんでしょう。
「ツッキー?」
ふいに背後から名前を呼ばれて、女の子が去って行ったのとは正反対の入り口に目を向ける。
まぁ、目を向けるまでもなく、呼び方で誰かはわかるんだけど。
「山口…何してんの?」
「あっ、俺?実は合宿に持っていく歯ブラシが無くてさ。慌てて買いに行ったところ。」
小振りな白いビニール袋を掲げながら、山口が公園に入ってきた。
「ツッキーは…また告白?最近凄いね!」
「それ、全然嬉しくないんだけど。」
何だか、自分で思って居るより疲れているのか、
ドサっとベンチに腰を下ろした。
「あー…、皐月さんの事?まだ続いてるの?」
「まだ…って言うか、突発的なものだから。いい加減、僕も面倒になってきたけど…和奏が一番大切だから。」
僕が面倒くさがりながらも、告白の呼び出しに一々応じているのは理由がある。
和奏への嫌がらせだ。
いや、正確には未遂だけど。