第11章 自分に素直になる方法
結局、そう言う事なんだ。
木兎さんと真剣に向き合えて無かったのは…私自身だ。
なのに…真剣に向き合ってくれなかった木兎さんを責める資格なんてない。
だから、木兎さんに会いたく無かったのだ。
会ってしまえば、選ばないといけない。
許すのか、許さないのか…。
真剣に向き合っていなかった私には、どちらも選べないのに。
ブーッブーッと携帯が震え出す。
木兎さんだ!
そう思って携帯を手に取ると、予想外な人の名前が表示されている。
[黒尾 鉄朗]
なんで…?
もしかして、木兎さんに何か聞いたのだろうか?
でも、まだ学校の時間…。
そう思って時計をみると、とっくに放課後に突入していた。
昨日のキスの事だろうか…?
それとも木兎さんの…?
本心は黒尾先輩と話したいだけだという事は気付かないフリして、
話してみなくてはわからない!と、自分に言い訳しながら通話ボタンを押した。
「もしもし…黒尾先輩?」
電話越しに黒尾先輩の吐息が聞こえて、それだけで心拍数が上がった。
「突然、悪りぃ。体調大丈夫か?ちょっと話したいことがあって…今、和奏の家の前まで来てんだけど。」
え!?
家の前って…。
慌てて部屋の窓を開けると、宣言通り玄関の前に立っている黒尾先輩が居る。
「思ったより元気そうで良かったよ。ちょっと…出て来れるか?」
姿を見ただけで…こんなに簡単に気持ちを持って行ってしまう黒尾先輩はズルい。
黒尾先輩の申し訳なさそうな様子から、昨日のキスの事について話に来たのだとわかって、ホッとした。
良かった…。
黒尾先輩から木兎さんの話なんてされたら…心が引き裂かれてしまう気がする。
「あ…の、黒尾先輩と話すことはありません。昨日の事だったら、気にしないで下さい。」