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優等生と人見知り【幽遊白書】

第3章 認識と認知


忘れ物を取りに行くため、廊下を歩いていると、何か違和感があり立ち止まった。目的の教室の奥。今は空き教室となっている部屋から楽しそうな女性の話し声がした。放課後の教室に人がいるのはおかしなことではない。勉強するも、遊ぶのも勝手だ。ただ、何者かと会話をしているようであるが、人の気配は1人だけだった。そして最も普段と異なることは、人がいるはずの教室から、妖気が漏れ出ていたこと。校内に妖怪が?自然と肌が粟立ち、鼓動が早くなった。耳をそばだててみるが会話はよく聞こえない。そっと気づかれないように廊下へ移動し、少し開いた扉の隙間から覗き見る。

電気のついていない教室におびただしい数の妖怪達がはいりこみ、1人の人間の周りを取り囲んでいる。高校の制服を着た女生徒が、窓際の席に座り、魑魅魍魎に向かい、にこにこと笑いながら何か話していた。女生徒に見覚えはなかった。妖怪を前に彼女は怖がるような素振りはない。かといって、彼女が妖怪達を使役しているような、支配をしている様子もなかった。小さい火の玉に化けた妖怪の一つがこちらを向いたような気がした。ざわめきはたちまち妖怪の間で広がる様子が見て取れる。見つかったか。彼女は笑顔を消し、感情のない顔をゆっくりとこちらに向けると、立ち上がった。

がらり、と扉を開けると自分の影が廊下に伸びているだけで、誰もいない。ふわふわとした丸いもの達は突然落ち着きがなくなるとあっという間に窓の外から出てしまった。どうしたのだろう。確かに、私と一緒に教室内にいたのとは別の、人型のかすかな淡い光が、扉越しにいた気がしたけど。
誰もいないよ。そう呼びかけ、教室の方を振り向いたが、光を帯びた丸いもの達は、見つけることはできない。私の言葉は誰もいない教室に吸い込まれた。
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