【イケシリ】sweet dreams*2【短編集】
第2章 放課後の罠 ーアーサーー
空が夕暮れの赤に染まる頃。
グラウンドからは応援団の練習する掛け声が聞こえ、音楽部の楽器の音も遠く聞こえてくる。
そんないつもの放課後。
「よし、こんなところかな。」
「うん。」
今日は日直だった。
一緒に当番だったのは隣の席のアーサー。
黒板消しや簡単な掃除を終えて、あとは集めたクラスメートのノートを職員室に持っていくだけだ。
2人きりの時間もあと少しで終わっちゃうんだなと、アーサーに淡い恋心を抱いている私は少し寂しい気持ちになる。
「悪いんだけど、俺文芸部の図書館当番と被っちゃっててさ、ノート一人で持って行ってもらってもいいー?」
「うん、いいよ。大変だね。」
なんだ、あと少しどころかもう終わりか……。
「名残惜しい?」
見透かされたようで一瞬ドキッとするけれど、アーサーはいつもこういう感じ。
特に深い意味なんてないんだろう。
「そんなわけないでしよ。」
「なんだー残念。俺は名残惜しいけどー。じゃ、またね。」
私の気持ちなんて知らないアーサーは、手を振って行ってしまった。