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【年上の男】 R18 ※加筆&修正中

第26章 峠


遠くに見える山並みを眺めながら紅茶をひと口飲み込む。

名前も分からぬ山だが、雪化粧をした木々がとても美しい。

この街で…娘は育ったのか。

「美波を連れて、函館に帰ります。」

そう言った早織の判断は正しかったと思う。



そんな昔の事を思い出していると、ウエイターに案内され、一人の女性がテーブルに着いた。

長い黒髪を一つに結わえ、薄化粧にVネックの青いセーターを着ている。

女性は無言のまま、鞄から貯金通帳と印鑑を取り出し、テーブルへと置いた。



通帳の名義は“橘早織”。



俺がこの旅で会いたかったのは、美波の母親である橘早織だった。



「こんなにいらないわよ。」

「俺に出来る事はこれだけだったから。」

「私が“自由になりたい”って家を出たの。
あなたに助けてもらうつもりなんてなかった。」



早織は怪訝な表情で通帳を突き返してきたが、正直こうして時間を作り、会ってくれた事が嬉しかった。






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