第23章 過去の女
「…何かあったんですか?」
「ごめん、起こしちゃって。」
「いえ…。」
「これからマネージャーが来る。」
「え?」
「週刊誌に撮られたらしい。」
「何を…ですか?」
「“神田美咲”がここに出入りしている所。」
佐久間さんは持っていた携帯電話をローテーブルの上へ置き、ソファーにもたれかかった。
その横顔はこれからの然るべき対応を模索しているようだった。
芸能人同士のスキャンダル。
私には関係のない世界だと思っていた。
こうして目の当たりにする事になるとは…。
「悪いけど…ちょっと出ててもらえないかな?」
そう力無く笑う佐久間さんの姿がとても痛々しく思えた。
佐久間さんと神田美咲の過去の恋愛関係において、私は完全に部外者だ。
しかし、今回はどうだろうか。
私は佐久間さんの恋人だ。
私にだって知る権利があるだろう。
「私も一緒に話を聞きます。」
「いや、これは俺の問題だから。」
「いえ、これは佐久間さんだけの問題じゃありません。
私の問題でもあるんです。
これは“私達”の問題です。」
戸惑う佐久間さんの返答を待たずして、リビングにインターホンの音が鳴り響いた。
【過去の女】おわり