第22章 スクリーンの中で
いつの間にか空は明るくなっていた。
日の出の美しさが売りと言われているこのホテル。
その言葉通り、息を飲むほどの美しい朝焼けがオホーツク海に広がっていた。
海岸沿いの雪をかき分けながら、彼女の足跡をたどる。
冷たい風が吹いたその瞬間、暁の光の中に黒髪の少女の輪郭が見えた。
接岸した流氷に乗りながら移動しているのか。
フラフラとおぼつかない足取り。
ホテルの浴衣に素足。
まるで吸い込まれるかのように、彼女はオホーツク海を進む。
「待って!!」
「止まりなさい!!」
「小松さん!!」
そう叫ぼうとも彼女が振り向く事はない。
早く彼女を連れ戻さなければ。
流氷に乗れば、そのまま沖に流される事もある。
気温は-20を下回る極寒。
誤って海に落ちれば凍え死んでしまうだろう。
彼女を守らなければ。
何としてでも連れ戻す。
“嫌いじゃない”
そんな理由から選んだ教師の道。
これは私の使命。
きっと私は…
彼女を守るために教師になったのだ。