第21章 あなたがおしえてくれたこと
初めて聞く声色に驚き、村瀬先生の顔をのぞき見た。
インパネの明かりに照らされた村瀬先生は、今にも泣き出しそうな表情を浮かべていた。
「俺は…教師で、君は生徒だ。
いつまでも側にいられないんだよ。」
無言のまま車を降りた。
すぐに車は走り去っていった。
“教師と生徒”
そんな事は最初から分かっていたはずだ。
何て最低な人。
それでも…私達はまだ修復可能だと思っていた。
ちょっとしたすれ違い。
また話し合う機会はいくらでもあるはずだ。
明日になれば…
明日になれば。
この日が村瀬先生との最後になるとは思ってもいなかった。
7月2日木曜日
「何か困ってる事はありませんか?」
視聴覚室でそう聞かれたあの日から、ちょうど1年が経っていた。
【あなたがおしえてくれたこと】おわり