第21章 あなたがおしえてくれたこと
「キモいんだよ。」
すれ違いざまに放たれる飯田理沙の言葉にも慣れてしまった。
高校入学から2ヶ月。
ここに私の居場所は無い。
きっかけは些細な事だった。
名前も知らない…話した事も無い男に告白された。
それが飯田理沙の元彼だった。
空気の様な存在でいれば特に害は無かった。
それは家に帰っても同じ事。
誰も私に興味が無い。
物心ついた時から、私はそういうポジションで生きてきた。
それでも、誰かに必要とされたいという思いは私にもあった。
下校途中、バスの中で痴漢に遭った。
父親よりも年上の男。
その男は私を金で“買いたい”と言った。
1時間5万円。
初めてのセックスは大好きな人と…
そう思っていたが、初めては案外あっさりと終わってしまった。
私を必要としてくれた事が素直に嬉しかった。
満たされたような気分だった。
私は男から受け取った金で携帯電話を買った。