第20章 氷の世界で見た碧さ
「温泉、もう1回入らない?」
「私はいい。もう寝る。」
時計を見ると午後9時。
彼女にとっては初めての雪国。
長時間冷たい風にさらされた事による疲労感。
日頃の疲れもたまっていただろう。
明日の朝も早い。
午前中のうちには空港へ戻りたい。
明日はどこか観光らしい場所へ連れて行ってあげられれば…。
そんな事を思いながらタオルの用意をしていた。
「じゃあ、行ってくるね。」
彼女はすでにベッドで横になり、イヤホンで音楽を聴き始めていた。
きっと…YURIの曲だろうか。
心地良い疲労感でこのまま眠りにつけると良いのだが…。
部屋を出ようとした時だった。
「先生…」と、後ろからか細い声が聞こえてきた。
「どうしたの?」
彼女はベッドから起き上がると、荷物の入った鞄の中から一冊のノートを取り出した。
【氷の世界で見た碧さ】おわり