第14章 正しい答え
タクシーを降り、砂浜へと向かう。
潮の香りにさざ波の音。
日差しの暑さに比べ、風はまだ冷たい。
北海道の夏は短い。
お盆が過ぎればすぐに秋がやってくる。
山や街路樹が街を彩る秋が終われば、長い長い冬が始まる。
そうやって私は生きてきた。
春の訪れを待ちわびながら。
砂浜に降りると、サンダルのヒールが砂に埋もれ、歩きにくかった。
辺りを見渡せば人はまばらで、思っていたよりも静かだ。
私は引きずっていたスーツケースを持ち、サンダルを脱ぐ。
もう少し海を間近で見たかった。
寄せては返す白波。
それはまるで私の心のよう。
会いたい、会えない。
会いたい、会えない。
佐久間さんへの想いを貫く事を胸に決め、この街へ戻って来たつもりだった。
それなのに、私は母を裏切る事が出来なかった。
もはや、母の望んでいるであろう人生を選択しようなどという問題ではない。
母を苦しめたくない。
その一心だ。