第14章 正しい答え
肩を震わせる私の隣へと、母は腰を下ろした。
こんな私を…母はどう思うのだろう。
いや、もうそんな事は考えなくても良い。
考えてはいけない。
早くこの場から立ち去らなければ。
そうでなければ…
私の“決心”が鈍ってしまう。
ソファーから立ち上がろうとした瞬間、母は私の肩をそっと抱いてくれた。
柔らかな腕の中、ほのかに香る石鹸の匂い。
温かな母の手が、ワンピースの裾を握り締めていた私の手を包み込む。
記憶の中では大きかったはずのその手は、もう私の手とさほど大きさが変わらない。
「何言ってるの。“子供”のくせに。」
母はそう優しく笑った。
私の“決心”は、母からすれば単なる子供の戯言だったのかもしれない。
母の腕の中、私は子供のように泣きじゃくる。
やはり…私は母を裏切る事が出来ない。
母の小さな手を握り返し、私は佐久間さんとの別れを決めた。