第13章 夢の続きを話そう
部屋の明かりを消し、瞳を閉じる。
何も考えないように…と頭では分かっているが、今日もまぶたの裏に映るのは佐久間さんの柔らかな笑顔だ。
マンションを飛び出したあの日から、私は毎晩…佐久間さんの夢を見ている。
思い起こせば、アパートの中庭で出会ったあの日から、一瞬たりとも佐久間さんを忘れた事はなかった。
いつも…頭の片隅にはあの笑顔がある。
それはあまりにも自然で、意識をして初めて気が付いた事だった。
私は…
私達は…
一体どこへ向かおうとしているのだろう。
佐久間さんが私の実の父親だった…。
そんな残酷な現実に心をえぐり取られるような痛みを感じつつも、佐久間さんを強く恋い慕う想いを消し去る事は出来ない。
私が佐久間さんに感じているのは、間違いなく異性に対しての愛だ。
決してそれは歪んだ父娘愛などではない。
私は今も…父親としてではなく、男としての佐久間俊二に恋をしている。
【夢の続きを話そう】おわり