第11章 目眩がするほど
「もう…余韻で仕事が手につかないの。」
そう色めき立つ愛美先生からコーヒーカップを受け取る。
昼休みの保健室。
日本武道館で行われたアイヴィーのライブから2日。
相変わらず愛美先生の話題はアイヴィーの事でいっぱいだ。
あの日、抱えきれないほどの興奮を胸に会場を後にした私達は、終電を逃してしまった事も忘れ、一晩中お酒を飲みながらアイヴィーの話に花を咲かせた。
明け方、タクシーで帰宅をした私を待っていたのは、ソファーで気持ち良さそうに寝息を立てる佐久間さんだった。
赤く染まった頬に、ほんのりと漂うお酒の匂い。
「ライブが終わったら打ち上げがあるから。先に寝てて。」と言っていたが、まさか自分の方が遅く帰宅するとは思ってもいなかった。
佐久間さんのお腹の上で丸くなるコロ。
つい数時間前まで、まぶしいくらいのライトを浴びながらギターをかき鳴らしていた姿からは想像も出来ない。
あまりに可愛いらしい寝顔。
そっと毛布を掛け、シャワーを浴びた。