第9章 甘い嘘●
シーツを洗いながら急いでシャワーを浴びる。
今日は毎週楽しみにしていたドラマの最終回だ。
佐久間さんは仕事で遅くなると言っていた。
時刻は午後9時40分。
今までテレビの無い生活をしていたのが嘘のように、私もすっかり“テレビっ子”になってしまっていた。
髪の毛を乾かし、洗濯機からシーツを取り出す。
シーツを洗うのはこれが三度目。
セックスをした次の日は必ずシーツを洗った。
あれから私達は二度、甘い夜を過ごしている。
シーツを洗っている間も、私は佐久間さんの事で胸がいっぱいだった。
ほんのりと甘い洗剤の匂いに包まれながら、佐久間さんが口付けた場所を思い出す。
会えない時間さえも愛おしい。
佐久間さんは今頃何をしているのだろうか。
もしかすると仕事を終え、帰路の最中かもしれない。
しかし、贅沢を言うようだが佐久間さんにはドラマが終わってから帰って来てほしいと思う。
以前、佐久間さんの在宅中にドラマを観ていてチャンネルを変えられた事があった。
「俺、こういうドラマ苦手なんだよね。」
そう笑っていた。