第7章 想い
言葉を失った。
彼女は知っていた。
愛美先生の言っていた事は本当だった。
彼女は村瀬先生に恋人がいるのを承知で関係をもったのか…。
それとも、関係をもった後に恋人がいる事を打ち明けられたのか…。
どちらにせよ、彼女の今の状況が良いものだとは思えない。
16歳の少女が抱える問題ではない。
「恋人がいる人と…何で付き合ってるの?」
「好きになったからに決まってるじゃん。」
「そんなのおかしいよ。」
「何でそんな事言うの?」
「私は…あなたが心配だから。」
「心配しなくても良いよ。
私は幸せだから。」
「どうして…辛いでしょ?」
「村瀬先生と離れる方が辛い。
例え恋人がいようとも構わない。
私が自分で決めた事だから。」
保健室のドアが開き、愛美先生がお手洗いから戻ってきた。
彼女は黙ったままクリームパンを食べ続ける。
先の見えない…希望が持てない恋。
彼女が背負っているものは私の想像をはるかに超えていた。