第7章 想い
「the IVYの『insomnia』だって。」
「…知ってる?」
「知らない。」
昼休みの保健室。
昨日のドラマ主題歌を彼女に尋ねてみると、彼女はすぐさま携帯電話を取り出して検索してくれた。
「何か…昔の人達らしいよ。」
「昔って?」
「うーん…、私が生まれる前とか。」
「古い曲って事?」
「ううん、昔人気があった人達が最近また活動し始めて新曲を出したんだって。
それが『insomnia』らしいよ。」
もともと音楽にうとい私には始めて聞く名前だった。
“the IVY”
決して音源が欲しかった訳ではないが、何となく昨日から気になってしまっていた。
「先生、こういう曲好きなの?」
「うん。ドラマを観てて素敵だなと思ったの。」
「私はもっと激しいのが良いな。」
「“激しいの”って?」
「JIGとか…。」
「ごめん、全然分からないや。」
彼女には悪いが、最新の音楽など私に分かる訳がない。