第6章 距離感
そして、これは私の勝手な望みなのだが、佐久間さんのマンションから近い街がいい。
さすがに同じ地区に…という訳にはいかないが、今のアパートよりも離れた街には住みたくない。
本当に勝手だとは思うが、佐久間さんとはこれからも時々食事をしたいと思う。
食事だけじゃない。
コロにも会いに来てほしい。
仲良く食卓を囲み、側にはコロがいる…そんな夢のような日々を想像していた。
一息つき、ソファーへと腰を下ろす。
ポケットから取り出した携帯電話。
この3日間、暇さえあれば不動産会社のサイトを眺めていた。
「…高いなぁ。」
今の部屋と同じ広さのアパートとなると、やはり値段は高くなってしまう。
ペット可の物件ともなればなおさらだ。
「仕方ないよね。」
そうつぶやきながら、床で毛繕いをしているコロを見つめた。
きっと、これが最後の引っ越しになるかもしれない。
家賃の事よりも、今は条件を満たす物件を探そう。
まるで終のすみかを探しているような心境だった。