第5章 条件
「ずいぶん“仲良し”になったんですね。」
「いや、この子が人懐っこいだけだよ。」
「何だか…佐久間さんが帰って来て嬉しそう。」
「俺の事“オモチャ”だと思ってるみたいだからね。」
子猫は佐久間さんの肩から降りようとはせず、元気な声で鳴き続けている。
「お腹空いてるんだね。」と言いながら、佐久間さんはキッチンへと向かった。
戸棚から子猫用のドライフードを取り出し、慣れた様子で皿へと移しかえる。
「“コレ”が一番美味しいの。」
そう笑う佐久間さんの足元には、ドライフードの箱が積まれていた。
部屋を見渡すと、猫用のトイレも設置されていた。
全て佐久間さんが揃えてくれたのだろう。
預かってもらっているだけでもありがたいのに、ここまでしてもらうのはさすがに気が引ける。
それと同時に、生き物を飼うという事はとても大変なのだと感じた。
ぬいぐるみを抱っこするのとは訳が違う。
私がこれから育てようとしているのは、尊い“命”なのだ。