第4章 種
戸惑う私に、佐久間さんは満面の笑みを見せた。
その笑顔はまるで、膝の上で眠る子猫にも匹敵するほどの愛おしさで、あれこれと考えを巡らせていた私の思考を停止させた。
心を射ぬかれたような不思議な感覚。
佐久間さんに全てを委ねてみたい…そんな事まで思ってしまった。
「………それならいいでしょ?」
「…はい。」
佐久間さんの言う条件に、私は大きく頷いた。
徐々に顔は熱くなり、胸の鼓動は早まるばかり。
これからどうなるのかはまだ分からないが、佐久間さんを頼ってみよう…そう思えた。
「じゃあ、よろしくね。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
ぎこちない返事をし、そっとうつむく。
私が条件を受け入れて子猫を預けようと思ったのは…
間違いなく佐久間さんへの恋心からだった。
【種】おわり