第4章 種
あの日作った目玉焼きは失敗だった。
フライパンの中で黒焦げになっていく卵にも気付かずに、必死で答えを導き出そうとしていたのだと思う。
結局答えは出ず、シャワーを浴び終えた佐久間さんとパリパリになった目玉焼きを食べた。
作り直すと言ったが、佐久間さんは「美味しいよ」と、いつものように笑ってくれた。
あれから1ヶ月…。
あの日から、私達は一度も会っていない。
25歳の誕生日はあっさりと過ぎ、気が付けば12月31日。
今年も最後の1日となってしまった。
北海道の冬は底冷えのする寒さで、朝からストーブの前で熱いコーヒーを飲む。
母は今日も仕事だ。
夕方には戻ると言っていたが、相変わらずよく働く人だと思う。
だからこそ、私はこの歳まで何不自由なく育ててもらえた。
午後からは近所に住む祖父母の家へ行き、料理を作る約束をしていた。
4人で過ごす大晦日。
私にとってはそれが“普通”であり“当たり前”の家族の姿だ。
しかし、世の中では私のような境遇は少数派なのだと思う。
私には、父親がいない。